上肢の骨と関節

肩甲骨、上腕骨、手根骨、指骨からなる上肢は肩関節や肘関節、手指の関節を構成し、日常生活を支える繊細な動きを可能にします。

上肢の骨格
上肢は体幹と腕をつなぐ「上肢帯」と、肩関節〜手指にかけての「自由上肢」に分けられます。上司帯の骨である鎖骨と肩甲骨が、肩及び腕の動きの土台となります。

体幹と腕をつなぐ上肢体
2種の骨からなる上肢帯に対して、自由上肢帯は、上腕骨から尺骨、橈骨、手指から先の手根骨、中手骨、手指を形成する指骨まで、6種30個の骨からなります。全方向に回転する肩関節や繊細に動く手指など、上肢は人体で最も広い可動域を持っています。

上肢の骨
・鎖骨
胸郭上部の前面で水平に位置するS字状の長骨。肩甲骨と連結して肩鎖関節を構成しています。胸骨とも胸鎖関節を構成しています。肩は皮下で触ることができ、外側(肩側)1/3は扁平になっています。

構成する関節
肩鎖関節、胸鎖関節
起始する筋 三角筋、大胸筋、胸鎖乳突筋
停止する筋 鎖骨下筋、僧帽筋


・肩甲骨
胸郭上部の背面に位置する左右一対の扁平骨。上腕骨とは健康上腕関節を、鎖骨とは肩鎖関節を構成しています。胸郭とも肩甲胸郭関節を構成していますが、これは筋肉による連結です。

構成する関節
肩甲上腕関節、肩鎖関節、健康胸郭関節

起始する筋
棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、大円筋、烏口腕筋、肩甲舌骨筋、三角筋(肩峰部、肩甲棘部)、広背筋(肩甲部)、上腕二頭筋上腕三頭筋(長頭)

停止する筋
肩甲挙筋、小胸筋、前鋸筋、僧帽筋(中部、下部)、大菱形筋、小菱形筋

肩甲骨は胸郭と直接は連結していません。そのため周囲の筋肉の硬直なとでズレた状態になりやすいです。肩甲骨がズレると連結する上腕骨や鎖骨にも影響が出ます。たとえば肩関節の可動域が小さくなったり、背中や肩などにコリや痛みが発生します。

・上腕骨
上腕部を形成する上肢で最大の長骨です。棒状で両端が太く中央がやや細いです。近位端で肩甲骨と肩甲上腕関節(肩関節)を構成し、遠位端では、尺骨・橈骨と肘関節(腕尺関節、腕橈関節)を構成しています。

構成する関節
肩甲上腕関節、肘関節

起始する筋
上腕三頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、肘筋、円回内筋、回外筋、橈側手根屈筋、長掌筋、尺側手根伸筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、浅指屈筋、総指伸筋、小指伸筋

停止する筋
三角筋、大胸筋、広背筋、大円筋、小円筋、棘上筋、棘下筋、鳥口腕筋、肩甲下筋

近位側の上腕骨頭は、健康上腕関節で連結しています。健康関節窩より半球状の骨頭がかなり大きいため関節の結合が緩く脱臼しやすいです。
靭帯とともに、ローテータカフ(回旋筋腱板)の筋群が上腕骨を引き寄せることにより、関節の安定を補助しています。
肩と肘はスポーツで故障する事が多い部位です。特に野球やテニスなどで使用過多の場合、遠位端の外側上顆や内側上顆が傷み炎症になることがあります。

・尺骨
前腕の小指側にある長骨。近位端で上腕骨と肘関節(腕尺関節)を構成しています。遠位端では橈骨手根関節へ関節的に関与しています。橈骨とも上下尺関節を構成しています。

構成する関節
肘関節、橈尺関節

起始する筋
円回内筋(尺骨頭)、回外筋、方形回内筋、尺側手根屈筋、尺側手根伸筋(尺骨頭)、浅指屈筋(尺骨頭)、深指屈筋、長母指伸筋、長母指外転筋、示指伸筋

停止する筋
上腕三頭筋、上腕筋、肘筋

尺骨は肘関節ではメイン、手関節てまはサブ的な役割を果たしています。遠位端に比べて、近位端は肥厚しています。近位端にある肘頭の滑車切痕は、肘関節で上腕骨の上腕骨滑車を包むように連結しています。
遠位端となる尺骨頭の下面では、関節円板をはさんで手根骨と接しています。
肘関節脱臼の大半は、尺骨の肘頭が上腕骨に対して後ろ側に外れるものです。肘先で骨が突き出た肘頭や、手首背面の小指側でコブ状に骨が突出した尺骨の茎状突起は、転倒時などに強打して骨折することもあります。

・橈骨
前腕の親指側にある長骨。近位端で上腕骨と肘関節を(腕橈関節)を構成しています。遠位端では近位列の手根骨と橈骨手根関節を構成しています。
平行する尺骨とも上下橈尺関節を構成しています。

構成する関節
肘関節(腕橈関節)、橈尺関節、橈骨手根関節

起始する筋
浅指屈筋(橈骨頭)、長母指屈筋、短母指伸筋、長母指外転筋
停止する筋
上腕二頭筋、腕橈骨筋、円回内筋、回外筋、方形回内筋

橈骨は肘関節ではサブ的、手関節ではメインの役割を果たします。
近位端での骨頭はバットのグリッブのような形状です。遠位端では広く太くなります。
中心部分の橈骨本体は外側へ少し湾曲し、断面が三角柱状となっています。平行する尺骨とは前腕骨間膜で不動結合となっています。

転倒時などに手を突くと、手首の付け根が折れる橈骨遠位端骨折というものが起こることがあります。特に高齢者に多く見られる骨折でコーレス骨折とも呼ばれます。
痛みや腫れが出るほか、手関節の可動域が小さくなります。

・手根骨
手の付け根を形成する8個の短骨です。近位列と遠位列に4個ずつ骨が並びます。
近位列は橈骨と橈骨手根関節を、遠位列は中手骨と手根中手関節を構成しています。
手根骨同士でも手根中手関節を作ります。

構成する関節
橈骨手根関節、手根中央関節、手根中手関節

起始する筋
短母指屈筋(深頭一部)、短母指外転筋、短小指屈筋、母指内転筋(斜頭の一部)、小指外転筋、母指対立筋、小指対立筋
停止する筋
尺側手根屈筋

8個の短骨

遠位側
小菱形筋
遠位の人差し指付け根部分にある小さな骨。
大菱形筋
遠位の親指側にある大きな骨。
有頭骨
手根骨の中心に位置する骨。手根中央関節の動きの中央となっています。
有釣骨
遠位の小指側にあるくさび形の骨。

近位側
舟状骨
近位の親指側にある三日月型の骨。近位端で橈骨の手根関節面と連結して、橈骨手根関節を構成しています。
月状骨
近位の中央部にある半月形の骨です。近位端で橈骨の手根関節面と連結して橈骨手根関節を構成しています。
三角骨
近位の小指側にある三角形の骨。
豆状骨
近位の掌側にある種子骨。手指骨のなかで最も小さいです。尺側手根屈筋の一部が停止しています。